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コンクリートの廊下に膝まづき、投げられた服をデイバッグに詰め込む。 それから、自分の履いていた靴を脱ぐと、四万三千円のローファーに履き替えた。 立ち上がってズボンの膝をパンパンと手で掃うと、ゆっくり廊下を歩きだし階段を降りて行った。 「淳(アツシ)・・・・・、又やらかしたのか?バカなヤツ。」 階段の踊り場に差し掛かった時、下の部屋の住人がオレの顔を見ながら言った。 玄関のドアを半分開けたまま、上下黒のスウェット姿でだるそうに頭を掻いている。その男は、かつての同級生。 「.......見て笑ってんなよ、シバクぞ!!.........って、言うのはウソ。朝メシ食わせてよ、拓海(タクミ)。」 そう言うと、オレは階段を三段飛ばしで駆け降りる。 「仕方ねぇな、まぁ、入れや。」 「うん、悪りぃな。」 玄関で靴を脱ぐと、少しだけ聞き耳をたてて上の様子を伺った。 この部屋は、オレが間借り.....いや、居候していた部屋の真下にあたる。上の部屋で床をダンダンと踏みしめる音が聞こえると、 「ミサキ、今度ばっかりはマジギレだな。浮気なんかするから.........何度目だよ、本当にバカじゃないの?」 拓海がテーブルの上にコーヒーカップを置くと言った。 そのカップに乗せたドリップパックにお湯を注ぎながら、少し上目使いにオレを見ると、その口元はなんだか嬉しそうで。 「おまえ、人の不幸を喜んでるだろ?!かつての親友が追い出されたっていうのにさ。オレ、今日からどうすんの?行くとこないんだぜ?!」というが、拓海は平然とした顔でお湯を注ぐだけ。
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