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コイツの性格は変わらないな。
もう十年以上も前から知っているつもりだけど、時折感じるんだ。
拓海は、オレが死んでも平然と線香あげてくれるんじゃないかってな。涙のひとつも零さないで、ブラックスーツに身を包んで焼香して帰って行くんだろう。オレの遺影にも上目遣いに笑って見せる。そんな男だよな。
「実家に帰れよ。電車で一時間。店から通える距離だろう?!」
「・・・・またぁ、知っててそんな事を言うぅ。オレが二年前親に勘当されたの知ってんだろ!」
「あ、そうだったな。お前がゲイだってのバレて、その日のうちに家から追ン出されたんだっけ?!」
拓海の口元が、また嬉しそうにニヤケる。
「なあ、ここにおいてくれよ。家賃半分出すからさあ。」
コーヒーカップを受け取ると聞いたが、「だ~めッ!彼女くるから。・・・」と後ろを向かれてしまった。
「十年来の親友と、三カ月前に知り合った女と、どっちが大事なんだよ!!」
オレがキレ気味に言うと、「そんなの女の子に決まってんじゃん。お前、ホントのバカだな。」と、またまた腹の立つ言い方をされる。
さっきから、バカバカと、何度も言われているオレは、悔しいけど言い返せないでいた。
「チクショー・・・」
台所の椅子に腰掛けると、そのままコーヒーをすする。
こうやって、オレは何度も拓海にフラれているんだ。
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