小さな勇気を持つ者、それを嘲笑う者

3/9
前へ
/12ページ
次へ
「何それ……」  苦笑を口元に浮かべて顔上げると、いつの間に移動したのか、薫と視線がぶつかる。 「少なくとも、お前みたいに相手の顔色伺ったりしないし、いたい奴としかいない。面倒くさいの嫌いだし」 「私だって……」 「お前は違うだろ。皆と一緒にいたいけど、どうしたらいいかわかってないだけだろ?」  言い返そうとして開いた口は、微かに震えるだけ。そのままゆっくりと口を閉じて、強く、固く、引き結ぶ。 「俺と違ってお前は、相手の痛みがわかるだろ。アイツらはいないんだから友達作ればいいだろ」 「私は……」  絞り出した言葉は、自分でもわかるくらい震えて、かすれていた。  私の考えを言わないと、思っていることを伝えないと、口にしないと人はわからない。  早く、ハヤク、はやく―― 『三神(みかみ)さんってさー、正義のヒーローにでもなったつもりなの?』  心臓が、ドクンッと大きく跳ねたようだ。  それからしばらく止まってしまったような感覚になって、息苦しくなる。呼吸が上手く出来ない。  どうしたらいいんだっけ? あれ、私……。  どうやって息してたっけ?
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加