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オイル、健司のオイルが欲しい。皮脂まみれになった手を頬にあてる。体温が皮脂を溶かし、じわじわと健司の皮脂が私の頬にのりうつってくるのがわかる。健司の憂鬱を封じ込めた臭気が鼻孔をかすめ、高揚する。生きていた頃、この男は私は抱いた。その時の何かが、ほんの少しの愛みたいなものが、彼の体のどこからかふと顔をだして、私のほとばしる情念を止めてくれたなら。そう思ったけれど。愛の片りんみたいなモノは、健司の体にはなにひとつ。イチミチたりとも見当たらなかった。
皮脂が頬に重なる。私は恍惚の表情を浮かべ、ふたたびパソコンをひらいた。
【毎日コツコツと続けることが、美の秘訣です。たっぷりとオイルをぬって、マッサージをしましょう。濃厚な愛で肌を閉じ込めてあげるのです。それが、美容クリエーターエリカのおすすめ美容法。
では、このオイルをお望みの方はダイレクトメールでお知らせください。メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!】
エリカはそっとパソコンを閉じた。
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