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社会人ケン
ケンが父から言われたのはこうです。
「お前は、親に養われてるから、まだ世の中の事がわかってない。テレビは、不特定多数の人が見るから、視聴率を稼ぐにはどんな年代の人にも通じる内容でないとダメだ。先ずは、働いてみろ。結婚して子供を持って、その子供たちが孫を連れてくるようになれば、大方世の中のことがわかるだろう。世の中には老人もいる。先ず、自分が歌詞の意味がわかってないと全ての人に歌を届けることができないぞ!」
ここで、やっと音楽プロデューサーの人が言った意味がわかったのです。
その後、ケンは高校を卒業しました。それと同時にバンドは解散しました。ケンは、地元の企業に就職しました。
入社式と研修が終わって配属されたケンは、仕事が終わると家でカラオケマシンを使って練習します。飲み会に参加すれば、カラオケの花形となります。
しかし、世の中に順調に進むとは限りません。どの会社にもクソ上司や出遅れお局、おしゃべりパートタイマーがいます。誰かに己の股間を静めるための捌け口を求めてる変態上司やパワハラ上司ばかりの会社では、誰かがターゲットにされています。辞めていく人も後を絶ちません。
若い子が次々と辞めていくので、そのターゲットがケンに回ってきます。叱られて何くそと奮闘しますが、これには腹が立ちます。「お前の歌は、この会社では役に立たない!」その叱りつけたクソ上司は、飲み会で音程やリズムが外れた演歌を歌うので有名です。みんなは、「音痴ジジイの病気が始まった!」と腹の中で失笑してます。
一度プロを目指したケンはこのクソ上司に見切りをつけ、次の日に辞表を出して退社しました。
会社を辞めたケンは、カラオケボックスでアルバイトすることにしました。モニターで各部屋を監視するのが主な仕事です。オーダーが来たら飲み物を届けたり、お客様が帰ったら掃除したり、毎日売り上げを調べて本部に報告するのも仕事のうちでした。店を閉めた後、会計と掃除を済ませて帰宅するのです。
ケンは職場の部屋で練習することはできないので、家のカラオケマシンで練習するのです。
一度会社で働き酒の味も覚えたケンは、特に演歌の世界が理解できるようになります。本当は、子育てすれば家庭の歌を理解できるのですが、それはまだ先のことでした。
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