お年玉で買ったカラオケマシン

歌手生活

ケンは、シンガーソングライターとして日の目を見るようになりました。その曲をきっかけに、ベストテンなどのような歌番組に出演するようになりました。コンサートツアーに参加して知名度を上げることに努めるので、ホテルを転々とする生活を送るようになります。どこから情報を得るのかホテルの周りにはファンで埋め尽くされるために変装して、覆面車で地下駐車場から移動するハメになりました。
一方で、実家では大変なことになっています。パパラッチに張り込まれるので、両親は買い物にも行けなくなりました。これまでスーパーで買い物していたのを通販に頼るようになり、洗濯も乾燥機能付きの洗濯機に買い替えて外へ洗濯物を干さないようにしました。
あのカラオケマシンはそのままにしてあります。時々両親が使う時もありますが、オークションで高値がつくのを見越して廃棄も売りもしないようにしています。家が博物館になるかもしれないということで、ケンの部屋は出て行った時と同じ状態にしてあります。母が、部屋の空気を入れ替えたり掃除機をかける程度で余計なことはしませんでした。
両親は、ケンが出演したテレビ番組を録画しています。ラジオ番組も録音しています。これも、マニアの間で高値で取引されるのを見越してのことです。そのメディアは少しずつ溜まってそれを保管するために空き部屋を利用してライブラリーとしました。
地元では、ケンが新聞に載る度にそのことで話が盛り上がります。ケンの後援会もでき、募金や支援に精を出すようになります。両親もその流れに否応なく巻き込まれます。町内会のような面倒くさい事もあります。これもケンのためだと嫌な顔をせずに、会員の方たちと一緒に行事に参加します。
ケンも芸能界での人間関係に苦心します。一癖も二癖もある人物の集まりだから、世間的な常識がない者がゴロゴロいます。話が通らない者には、マネージャーを使って自分自身は顔を合わせないようにします。
一般企業よりも面倒な事が多い世界なので、自分の周りをイエスマンばかりのスタッフで固めて自分自身は傷が付かないようにする処世術を身に付けたのでした。