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「あの、急に押しかけてすみません、お世話になります」
「――いえ、部屋は余ってるので」
宿代は連れが払いますというと、弟の顔が少し嬉しそうだったので、逆に気を遣わなくて済みそうだ。
古い建物だが台所と兄弟の部屋以外に二部屋あるので、暮らすには十分な広さだし野菜がカゴに置いてあるので、自給自足の生活をしてるようだ。
「お湯あるかな、ココアとか持参してるから皆で飲まない?」
瑠里は泊まりの時は無駄に色々準備したがるので、木村さんもそれを踏まえて荷造りをしてくれている。
「うん、あるよ」
ポットを移動させコップを用意してくれると、リュックからパウチに入ったココアとコーヒーを出し、兄弟にココアを譲っていた。
非常用にスティック状のインスタントコーヒー等を持ち歩いているのにも驚いたが、毎度こんなに備えてるなら遭難しても大丈夫そうだ。
子供二人はぎこちないけど笑顔も見れたし、甘い飲み物でホッとしたのか徐々に口数も増えていった。
兄の名はルーア弟はセクロといい、二人共整った顔立ちをしているが、魚の世界特有なのか目から感情は読み取れない。
ルーアは家計の為に仕事に出ておりセクロはまだ幼い為、畑で野菜を育て協力している。
親戚にお世話になったり他にも生活の手段はありそうだが、それぞれ事情もあるだろうし、余計な事は言わないでおいた。
「ルーアは何の仕事してるの?もし明日早いならもう寝ようか?」
急にお邪魔した身だし生活リズムを崩しても申し訳ないので、何気なく聞いてみると、何でも屋の助手をしているらしい。
修理依頼や掃除等、色んな事を請負っているらしいが、勉強になっていると謙虚なとこは私達と違う。
私よりずっと若いのに愚痴や文句も言わないし、見習わねばと思いつつ、その日は野菜の育て方で話が盛り上がりベッドで休ませてもらった。
翌朝は少し早く起きたつもりだったが、セクロは台所に立っているので、顔と歯を急いて磨き手伝う事にした。
じゃがいもやピーマン、パプリカ等がザルにあり、卵もカゴに用意されていて、ぶっちゃけ我が家より全然豪華だ。
「パンそろそろ焼き上がるから」
「――はい」
釜を指さすセクロに、自家製パンかよと心でツッコみ目を見開いていた。
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