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シャワー時もドアの前で見張ってもらい、お礼に山金犬の身体を洗ってみたが、汗だくになりもう一度シャワーを浴びた。
冷蔵庫の物にも手をつけず警戒していたが、せっかく豪華なホテルに泊まったのに、勿体ない気もしてくる。
「晩御飯があんぱんっていうのもね……何か近くにないかな」
ルームサービスを頼みたいのは山々だが毒を盛られても嫌だし、山金犬と向かい合いどちらが先に食べるのかで、揉めるのも御免だ。
女子達の会話を聞いたばかりに頭の中は疑いで膨れ、普段サスペンスを見てるのもあり妄想まで浮かんでくる。
「寝静まった所を襲うと言いたいけど、相手は山金犬だし、まず毒で弱らせないと返り討ちだよね」
そうなると食事に盛るという答えになり、美味しそうなルームサービスのメニューも頼む事が出来ずにいた。
「犬は生け捕りだけど、飼い主の安否は関係ないから……私にはたっぷりと盛られる予感がする」
本来ならもう外出はしたくないが、ホテルの敷地内には売店が幾つかあり、その中でも一番近い場所は一般客は近づけないようになっていた。
「コレいいじゃん!このエリアに泊まってる人専用だからアンタにビビる奴もいないし」
ここに泊まる客は売店なんか利用しないだろうし、もしかすると貸し切り状態で入れるかもしれない。
「特殊な餌とか売ってるかもしんないけど、私らも食べれるパンとかおにぎり位あるでしょ」
豪華ディナーを食べ毒殺されるか、おにぎりとお菓子で腹を満たし生き延びるというなら、迷わず売店に行く。
まだ働いてお金を貯めドラム缶……いや、母を養い通信制の高校を卒業し、最悪ここで働けなくなっても路頭に迷わないよう準備もしたい。
「もっと美味しい物と出会えるかもしれないのに、こんな所で死んでたまるか!」
気合いを入れ売店に行こうと着替えを済ませると、山金犬もついて来る気満々だったが、そんなに離れてないし置いて行こうか迷っていた。
「すぐに戻って来るから、アンタはじっとしてた方がよくない?」
気遣いを込めて言ってやってるのに、山金犬の目は別の事を吹き替えできそうな表情をしていた。
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