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『つうかさ、奴らが来てもやってやるって言ってんじゃん?一人行動して自分だけ美味しい物にありつく気じゃないよな』
倉稲を使ってる訳でもないのに何となくそう思えるのは、ここ数時間のコミュニケーションの賜物か私の妄想かもしれないが、部屋に残る気はなさそうだ。
「分かった、連れてくけど……私の傍から離れたり、くれぐれも勝手な行動は禁止だからね」
部屋に入った時点で一旦リードは外していたが、外出する時はつけると諦めたのか、自らジッと待っている。
「初めはコレつけるだけでも怖かったけど、随分慣れたよねお互い」
床に置いたリードの輪に足を通すと、カードキーをバッグに入れ、エレベーターに乗り込んだ。
フロントにキーを渡し敷地内を売店に向かって歩いていると、程よく日が落ち始めている。
山金犬の大きさは誤魔化せないが、皆ディナーの時間なのか人通りが少ないのも助かる。
ペットも一緒に入れる建物はやはり造りが頑丈で、むしろ安心出来るし、周りを気にせず堂々と歩けるのも嬉しいポイントだ。
ここも上の階は泊まれる設備のようだが、私達のエリアとは微妙に違う造りだが、ランクが上すぎて高級そうという事しか分からない。
「あっ!売店あった」
小綺麗なおばちゃんが立っている売店は、親近感が湧いたが、売っている物は特殊な餌と軽食とオヤツ……というか恐らくすべてペットの食事だと思われる。
「あのっ、これって人は食べれます?」
「勿論ですよ、ペットと同じ物を食べたいって仰る方もいるので、おやつに買って行く方もいらっしゃいます」
意外と物言いが丁寧なので驚いたが、高級なホテルでタメ口だと違和感もあるし、その辺は世界は関係ないらしい。
本気の食事というより、おやつ感覚で買って行く雰囲気だが、私達がここに来た目的は今晩の食事の為だ。
中身が分からないエリアは無視して、パンの辺りを見ていたが、気になる商品が何点かあり顔がニヤける。
「すいません、焼きそばパンとアメリカンドッグ、あと羊羹も下さい」
ラシンの顔を見ると追加でハッシュドポテトも頼めと言われてる気がしたし、私も欲しいので二個づつ購入した。
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