99人が本棚に入れています
本棚に追加
「仲が良くて羨ましいですね、ぴったりと寄り添われて」
他から見たら微笑ましい光景かもしれないが、色んな事情が積み重なり、こういう関係になっているのだ。
苦笑いをしながら売店を去ると、袋からいい匂いがするので、飲み物を買ってその辺に腰をかけて食べる事にした。
「焼きそばパンが微妙に温かいから、今食べた方が美味しいと思う」
カードを使える自動販売でコーヒーと水を買うと、ホテルの敷地を見回したが殆ど人の姿はない。
今のうちに晩御飯を済ませ、みんなが散歩に出る頃部屋に戻ればあとは寝るだけなので第一関門はクリアしたといえる。
「あの辺りにしようか」
ホテルの入口近くの芝生の上だが、少し盛り上がっていて広いので、ペットと戯れるフリースペースという感じだろうか。
道路側に面してはいるが、もし敵が来たとしても見渡せるので、私は道路側で山金犬は敷地側が見えるよう背中合わせで座った。
スプレーを振ってから焼きそばパンを頬張ったが、売店とは思えないクオリティの高さだ。
パンはフワフワでパサつきもなく、薄っすらと塗られたバターは焼きそばを邪魔していない。
「美味しすぎないコレ?金持ちの焼きそばパンってこれが普通なのかな」
チラッと背中側を見ると、山金犬のパンはなくなっていたので、アメリカンドッグを投げておいた。
「いやぁ参ったわ……焼きそばもう一個買いに行こうかな」
アメリカンドッグを譲ったとしてもペロリと平らげるだろうし、明日は帰るので今日の内にもう一度食べておきたい。
「ねえ、これ食べていいけど、もう一度焼きそばパン買いに行っていい?」
相棒も気になってる様子なので、アンタの分も買うからと付け加えていた。
山金犬がアメリカンドッグとハッシュドポテトを食べてる間、何気なく道路側を見ると、一台のワゴン車が徐行並みの速度で走っている。
ここの宿泊客で駐車場にでも停めるのかと思っていると、予想通りこちらに向かっていたが、段々と近づくつれ違和感を覚えた。
「ホテルっていうか、ここに来てない?あぶな――っ!」
一直線に向かって来るので、慌てて立ち上がろうとすると、急に速度を上げた車が目の前に見えた。
バンッと大きな音を立て、ワゴン車は芝生の置物にぶつかって止まったが、私達は大きく弾き飛ばされた。
最初のコメントを投稿しよう!