ペットと公園デビュー

21/29
前へ
/119ページ
次へ
「ぐっ……ワザとじゃな……いから」 直前に稲膜を張り犬は蹴って衝突から守ったが、瞬時に駆け寄り逆ギレているのか、大きく口を開けているので両手で必死に押えていた。 飲み込みそうな勢いなので大きな牙が見え、蹴ったのは申し訳ないと思うが、車から守ろうとした気持ちは汲み取ってほしい。 余計な事をしなくても逃げれたと言われると終いだが、凱の身内にもしもの事があればと用心するのは当然の話だ。 「なんだ?飼い主が襲われてるぞ」 「犬はピンピンしてるようだ、もう一度やり直せ」 会話は聞こえても、山金犬の口で私の頭が隠れているので姿は確認出来ないが、奴らはもう一度車をぶつけるつもりだ。 「おい、おふざけはこの辺にしないと、本気でシバクぞ」 思わず自が出ると山金犬は離れてくれたが、犯人らしき五人組は、背中を向けたまま微動だにしていない。 妙に思い近づくと視線の先に黒い服……だが、王子がマントの下に着てそうなスタイルなので嫌な予感が走る。 「今殺されるのと、後で消されるの……どちらがいいかな?」 聞き覚えのある声にゾッとして『どっちも嫌だわ』と心でツッコんだが、五人がその言葉を聞き入れてないのが不思議だった。 山金犬のトップは顔を見ただけで殺されそうなのに、微妙に戦う気があるのは、自分達の倉稲的なチカラが凄いと思っているからだろうか。 「えぇ――っ!」 驚いて声を上げると全員が振り向いたが、声は凱なのに顔だけ全く違っていて、影武者か変装か分からないが小脇に抱えてるのはウチの王子だ。 「な、なぜこちらに?」 「この子がずっとソワソワしていたので、ここで経過を見ようと話が纏まりました」 予防接種を受けたイナリはチワワ位の大きさをキープしていて、犬の世界の技術は本当に凄い……ので恐らく凱も変装だと思われる。 こうなるといつもの容姿も偽りかと疑問も浮かぶが、瞳は金色でも別人にしか見えず、キリッとした男前ですれ違っても絶対に分からない。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加