99人が本棚に入れています
本棚に追加
「騒ぎになると面倒だ、出直そう」
犯人が散ったので追いかけようとしたが、凱に制止され先を見ると、つなぎ姿が後に続いていたので安堵の溜息が漏れた。
「はぁ……どうなる事かと思ったけどアンタ!何してくれてんの」
山金犬に向かって大きな声を出すと、凱がニヤリと笑みを浮かべ答えてくれた。
「珍しいですが、その子は貴女を守ろうとしたんですよ」
「でもこの犬は草食じゃないですよね……」
予想通り頷かれたが、マブダチでもない限り口の中に入れようとされても、食べられるとしか浮かんでこない。
でもそこよりイラついたのは、私を口に入れる時に隙ができ、その間に毒でも注射されたら台無しだったいう事だ。
「アンタ毒打たれて一回捕まってんだよ?せっかくお天道様を拝めるようになったのに、無駄にするんじゃない!」
もし犬に毒が注射され、盾にされたら私も動けなかったし、最悪殺られていたかもしれない……犯人か凱に。
「勝手な行動は禁止の約束なのに、聞かなかったからコンビは解消ね、巻き込んで悪かったけどゆっくり身体休めて」
「いえ終わりではないですよ、公園の女性達もどうなったか確認するつもりですし……今日はここで過ごしましょう」
流れで職場に帰る算段だったのに、シレッと引き留められ苦笑いするしかない。
ふと王子を見ると、チワワの大きさをキープしているものの、何となく目線を合わせないのが気になった。
「イナリ……具合悪いんですかね」
「いえ、兄弟分が仲良くしすぎでヤキモチでも妬いているのでしょう」
『分かりづらいし!』
普段ならこんな会話も出来ないが、見た目が違い話がスムーズだとしても、残虐な部分は変わらない筈なので機嫌を損ねないようにしたい。
「イナリ、明日は一緒に帰ろうね」
本当は抱っこして頬をスリスリしたい気分だが、恐らく今は止めて欲しいと思っているに違いないので、気持ちを汲んでおいた。
最初のコメントを投稿しよう!