ペットと公園デビュー

23/29
前へ
/119ページ
次へ
「では、本当に片付いたか確認してきますので、この子を見ててもらえますか?」 イナリを渡すとあっという間に走り去ってしまったが、ここは関わらない方が利口だと思い直し、もう一度売店に向かった。 直後なので若干恥ずかしいが、今度はイナリも連れているので、この子分という事で誤魔化せる。 「あら、いらっしゃいませ」 先程のオバサンと一緒だったが、イナリの頭を撫でながら残りの焼きそばパンを全部買い占めた。 一個百二十円でソバもたっぷりと挟んであり、パンも美味しい上にルームサービスを頼むより安いので、怒られる事もない。 先程の事故で左腕が少しジンジンするが、イザリ屋の薬を塗り部屋でパンを食べようと、胸を弾ませていた。 「凄く美味しいからイナリも一緒に食べようね」 敷地を横切りペット専用の棟に移動すると、前から塵里達の姿が見えたので、サッと植木の傍に隠れた。 キセロは蛇のように首の部分を立て地面を張っていたが、塵里といるのが楽しそうで、何となく出会わない方がいい気がした。 「別に悪い事してる訳じゃないけど、せっかくの水入らずだしね」 思ったより植木が小さいので山金犬の背中を借りてまたがった。 イナリを腕に抱え焼きそばパンの袋を破っていると、二匹同時に鼻をクンクンとさせていた。 「分かってるって、順番だよ」 まず背中を借りてる山金犬の口に一つ入れ、イナリには半分に割ってあげていると、その様子を塵里が見ていた。 「先程襲われかけたんで、お伝えしようかと」 「……ご心配なく、もう引き殺されそうになりました」 塵里の隣にいるキセロの視線を察し、焼きそばパンを一つ投げると、華麗にキャッチを決めペコッとお辞儀をされた。 「腕……大丈夫ですか?良ければいい塗り薬がありますよ」 すぐに気づいた塵里にドキリとしたが、明日はキセロも帰るので、これ以上邪魔はしたくない。 「この子も仲間に入りたいようなんで、いかがでしょう」 奴の目的は仲間ではなくパンだと分かっていたが、腕のジンジンが少し酷くなったので頷くと、邪魔者が入って来た。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加