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「では、本当に片付いたか確認してきますので、この子を見ててもらえますか?」
イナリを渡すとあっという間に走り去ってしまったが、ここは関わらない方が利口だと思い直し、もう一度売店に向かった。
直後なので若干恥ずかしいが、今度はイナリも連れているので、この子分という事で誤魔化せる。
「あら、いらっしゃいませ」
先程のオバサンと一緒だったが、イナリの頭を撫でながら残りの焼きそばパンを全部買い占めた。
一個百二十円でソバもたっぷりと挟んであり、パンも美味しい上にルームサービスを頼むより安いので、怒られる事もない。
先程の事故で左腕が少しジンジンするが、イザリ屋の薬を塗り部屋でパンを食べようと、胸を弾ませていた。
「凄く美味しいからイナリも一緒に食べようね」
敷地を横切りペット専用の棟に移動すると、前から塵里達の姿が見えたので、サッと植木の傍に隠れた。
キセロは蛇のように首の部分を立て地面を張っていたが、塵里といるのが楽しそうで、何となく出会わない方がいい気がした。
「別に悪い事してる訳じゃないけど、せっかくの水入らずだしね」
思ったより植木が小さいので山金犬の背中を借りてまたがった。
イナリを腕に抱え焼きそばパンの袋を破っていると、二匹同時に鼻をクンクンとさせていた。
「分かってるって、順番だよ」
まず背中を借りてる山金犬の口に一つ入れ、イナリには半分に割ってあげていると、その様子を塵里が見ていた。
「先程襲われかけたんで、お伝えしようかと」
「……ご心配なく、もう引き殺されそうになりました」
塵里の隣にいるキセロの視線を察し、焼きそばパンを一つ投げると、華麗にキャッチを決めペコッとお辞儀をされた。
「腕……大丈夫ですか?良ければいい塗り薬がありますよ」
すぐに気づいた塵里にドキリとしたが、明日はキセロも帰るので、これ以上邪魔はしたくない。
「この子も仲間に入りたいようなんで、いかがでしょう」
奴の目的は仲間ではなくパンだと分かっていたが、腕のジンジンが少し酷くなったので頷くと、邪魔者が入って来た。
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