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「お晩どすぅ……いい塗り薬ならウチにございますので、お帰りやすぅ」
背後でハリのある声を出されビクッとしたが、キツネ……いや、社長は完璧に気配を消していて気づけなかった。
「襲われかけた者同士お茶くらい構わないでしょう?積もる話もありますし、囮にもなったので」
「いえ、囮役は山金犬ですがご協力頂いたという事で、このじじいでよければお茶をおごり……」
「おごれと言いたい訳ではなく、彼女との時間を作って欲しいのですが」
大蛇もしつこいかもしれないが、ウチの社長も相当なものだしおまけにウザい。
腕のジンジンは段々と痛くなりつつあるのに、折り合いが付かないのか暫くかかりそうだ。
パンの袋を開ける位は出来るので、山金犬・イナリ・キセロの順で配り、最後に自分で食べてから話に割って入った。
「お話し中すみません、腕痛いしパンも無くなったんで部屋に戻っていいですか」
「えぇっ、ウソ、マジでェ大丈夫ぅ?超大型新人にもしもの事があったらウチ……ウチッ……生きて」
「うっさいんだよじじい!舞妓バーションもウザいし、早く薬塗りたいのに長引かせんな」
黙って移動すると面倒だと思い声をかけたが、早く戻りたかったので、社長は放置で王子を抱え山金犬とホテルに入った。
フロントでキーを受け取り、エレベーターに乗ったが、行きとは違いかなり狭い。
「いや……なんで全員でついて来んの?大蛇が増えてる分、かなり窮屈なんだけど」
「超ウケるぅ、エレベーターの中で山金犬と大蛇が黙って乗る絵ずらって、まずないしぃ」
確かにこの状態でドアが開いても『あっ大丈夫です』とやり過ごし、絶対に次の便に乗りたい。
本当に笑いが出そうになり、社長の言葉遣いをツッコまなかったが、塵里までついて来てたのも吹き出しそうになる。
蛇系も執念深そうだけど社長並みだわ……と考えると我慢出来ないので、ルームサービスは何にしようと別の事で頭を埋めていく。
六階に着きカードキーを差すと、電気がついていて食べ物の匂いもするので、社長を蹴り先頭を譲った。
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