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次のチャイムが鳴ると今度は社長が出たが、待望のスイーツでテンションがアガる。
「今回も散々な目に合ったんで、ケーキぐらい許されますよね、いただきます!」
「それは構わんが、ワシに内緒で何処かのトップと仲良くなるのは止めてね」
「山金犬が接してくるなんて、相当なチカラの持ち主って事になるので、やはり興味は湧きますね」
塵里も会話に入ってきたが、社長は間の位置を陣取ってケーキを食べている。
キセロは啄と一緒にご飯を食べていたが、デザートが届いたと知ると、静かに私の横に移動して来た。
「さすが性悪だね、啄に上手く取り入ってもデザートは見逃さないなんて」
モンブランを二個口に投げると、無言の『ペコお辞儀』をしているが、この姿も何となく神経を逆なでする。
あまり感謝している風に見えず、例えるなら『あざっす』をもっとライトにしたように映るからだ。
「最近は百合さんとも上手くやってるとか……色んなチカラの要素のある人の近くに居れて、羨ましいですよ」
「いえ、瑠里とは仲いいですけど私とはそんなでもないです」
チラッと見ても今は素の姿だし、神楽に出てくる大蛇と目を合わせてるようで、何も読めない。
「近くで見ると本当に怖い面してるよね……顔も胴体も大きいし一口で食べられそう」
可愛くないと言われたのが心外だったのが、少しとぐろを巻き、コンパクトにしているのが小憎いところだ。
「確かに百合さんなら血も美味しいでしょうけど」
サラリと言われると本音に聞こえ、さり気なく社長の近くによりつつ答えてしまう。
「……食べるならまずこのじじいか、向こうにいる豚からでお願いします」
「――誰が豚だ、先輩に向かって!」
食べていても会話は聞いているようで、即座にツッコまれたが、スイーツのフォークが無意識に止まってしまう。
「そんな顔しなくても、ちょっと驚かせようとしただけですよ」
「驚くというか、本気で怖いんですけど」
クスリと笑う姿も綺麗な顔立ちだと逆に不気味で、改めて尋常じゃない者達を相手に仕事をしていると痛感した
塵里はいつもより話しをしてくれ、キセロも楽しそうに見えたので、ホッとして小さな宴はお開きになった。
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