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一番前にキセロ、その次にイナリを挟んで最後に私が並んでいると、おはぎは二種類あり悩ましいところだ。
「これ……一人一個だよね、タダだし」
「どちらが気になるんです?」
「とりあえずきな粉……でも小豆も美味しそうで……でも中身が小豆だったら、絶対にきな粉です!」
思わず熱く語るが、そんなテンションなのはウチの住人だけで、イナリ達も真剣な瞳でこちらを見てくる。
「分かってるって、もし二個食べれるなら全員希望ね」
こういう時にだけ『あ・うん』の呼吸で、言いたい事を汲み取って貰った二匹は、順番が抜かれないよう隙間をつめて進んでいた。
「ふふっ、皆人格が変わったように真剣ですね」
貧乏一家はいつもの光景だが、大蛇の世界のトップには理解できない行動というか、金持ちにこの気持ちは分かるまい。
ただ卑しさを持つ子に育ってしまっていいのか気になり、凱には聞けないので後でやんわり塵里に質問してみようと思った。
前の人が二種類パックに入れて貰ったので、全員分二個づつ注文し、紙コップでお茶までサービスしてくれ顔がニヤけた。
「いやぁ、ホントここ極楽だよね」
もう狙われる心配もないし、近場に腰を下ろそうとしたが、前にオオトカゲの姿を捉え木陰に移動した。
二匹が私の膝の上に乗り、早く渡せと急かされていると塵里はプッと吹き出したが、配り終えると取られないようきな粉から口に入れた。
小ぶりなおはぎなので二個でも足りないが、タダだしおかわりをする人もいないので、お茶を飲んで誤魔化した。
「楽しんで生活してるようで安心しました」
「でもウチは貧しいので……この子達に悪影響というか、卑しさが染みついたらと不安になります」
キセロを例に出しさり気なく質問を混ぜてみたが、答えは思っていた内容とは違っていた。
「いい経験をしていると思いますよ?そして何より自身が望んでる事なので、心配はいりません」
この一言で随分と救われ、塵里と違う雑談を交えつつ、大蛇と住む上でのアドバイスまでもらった。
昨日見た男性……いや、ココちゃんの飼い主が手を振る姿が見えたので、お別れの挨拶をしようとゆっくり立ち上がる。
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