ペットと公園デビュー

28/29
99人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
一番前にキセロ、その次にイナリを挟んで最後に私が並んでいると、おはぎは二種類あり悩ましいところだ。 「これ……一人一個だよね、タダだし」 「どちらが気になるんです?」 「とりあえずきな粉……でも小豆も美味しそうで……でも中身が小豆だったら、絶対にきな粉です!」 思わず熱く語るが、そんなテンションなのはウチの住人だけで、イナリ達も真剣な瞳でこちらを見てくる。 「分かってるって、もし二個食べれるなら全員希望ね」 こういう時にだけ『あ・うん』の呼吸で、言いたい事を汲み取って貰った二匹は、順番が抜かれないよう隙間をつめて進んでいた。 「ふふっ、皆人格が変わったように真剣ですね」 貧乏一家はいつもの光景だが、大蛇の世界のトップには理解できない行動というか、金持ちにこの気持ちは分かるまい。 ただ卑しさを持つ子に育ってしまっていいのか気になり、凱には聞けないので後でやんわり塵里に質問してみようと思った。 前の人が二種類パックに入れて貰ったので、全員分二個づつ注文し、紙コップでお茶までサービスしてくれ顔がニヤけた。 「いやぁ、ホントここ極楽だよね」 もう狙われる心配もないし、近場に腰を下ろそうとしたが、前にオオトカゲの姿を捉え木陰に移動した。 二匹が私の膝の上に乗り、早く渡せと急かされていると塵里はプッと吹き出したが、配り終えると取られないようきな粉から口に入れた。 小ぶりなおはぎなので二個でも足りないが、タダだしおかわりをする人もいないので、お茶を飲んで誤魔化した。 「楽しんで生活してるようで安心しました」 「でもウチは貧しいので……この子達に悪影響というか、卑しさが染みついたらと不安になります」 キセロを例に出しさり気なく質問を混ぜてみたが、答えは思っていた内容とは違っていた。 「いい経験をしていると思いますよ?そして何より自身が望んでる事なので、心配はいりません」 この一言で随分と救われ、塵里と違う雑談を交えつつ、大蛇と住む上でのアドバイスまでもらった。 昨日見た男性……いや、ココちゃんの飼い主が手を振る姿が見えたので、お別れの挨拶をしようとゆっくり立ち上がる。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!