恒例行事で腕試し

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通常トレーニングは機械操作をし敵役を影で浮き出したり、項目によって選択しているが、八雲さんは機械の前に立ったので本当に羽根つきではなさそうだ。 河童の世界と照ちゃんコラボの力作で、本当の忍者探偵Ⅹのように推理や戦ったり出来るらしく、簡単に言えば体験型ゲームのようなものだ。 「私その漫画の内容分からないんですけど」 「知らなくても心配いらないよ、じゃあ組み分けだけど今まで通りで」 今回は瑠里とペアが良かったのに、また八雲さんかと浮かない顔をしていると、狐二匹は頭巾を被りだしたので頭の中で撤回した。 「分かってると思うけど足は引っ張らないでね、相手は間抜けな狐だと思ったら怖くないから」 「誰が間抜け狐じゃ若僧が!狐に似てるとたまに言われるセクシーボーイじゃろが」 すぐにいい返してきた時点で自覚があるのだと思うが、余計な事をいうと油を注ぐだけなので黙っておいた。 「勝手に社長が名付けただけで、忍者探偵関係なくても成立するから」 八雲さんは頭巾は被らず、代わりに双棒に似た感じの細長い二十センチ位の棒を渡してくれた。 「これは武器で、あとはこのサングラスを装着してね」 サングラスといっても貼るタイプで、半透明の薄っすらオレンジがかったペラペラの紙のようだったが、仮面舞踏会でダンスが出来そうな雰囲気だ。 耳にもかけないし、かといって隙間も開いていて目の邪魔にもならないので、身体を動かしても外れる心配はなさそうだ。 ただそうなると頭巾を被ってもほぼ見えないので、八雲さんが言う通り間抜けな狐チームな気がする。 おまけに頭巾で目の部分しか出ていないのに、サングラスを貼るとただの怪しい人なので、こちらのチームで良かったと思えた。 「本編で結界の術の時サングラスみたいなのつけてるもんね」 「そうじゃ、そう思えば何の違和感もないが、ストーリーを知らない者からすれば不審者と疑われそうな……」 「たわけが!それでも忍者探偵Ⅹか!」 瑠里に喝を入れられハッとする社長だったが、私は他人のフリをしたかったので、機械の方向に視線をやり誤魔化した。 八雲さんは何事もなかったように操作方法の説明に入ってくれたので、気持ち的にも助かったし今回の出だしは幸先がいい気がしていた。
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