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二分前まで嫌な子だったのに、お目当てのバイト君が来ると、お花畑で戯れる天使のような女子に変わる姿にもウンザリだった。
私は極貧生活をしていたので、恋愛ごとや友達と出かける余裕は一切なく、頭を過るのは今月どう切り抜けるかばかり。
『この中に花畑の天使がいる!』
目に見えるものは、今後敵に使う上で全くアテにならないので、五人がキャップを深く被る理由も分かる。
順番に確認しようとしても全員済むまでに粉風船を食らってしまうが、瑠里は指を組み忍者のポーズを決め、つなぎは汚れていない。
「ダメだ……これも何か違う」
元々人を見る目に優れている妹は、パッと見でも分かる位に要領を得ているが、私は前途多難な挙句キツネからクレームが出そうだ。
「やっぱ向いてないのかも、帰ったら事務に異動させてくれないかな」
「そう?般若も薄々気づいてるのに、あえて動いてないように思える」
「確認が間に合ってないけど、必死に見破ろうとはしてるよ」
言い終わってハッとしたが、倉稲を占いの館で使った時は、頭上の言葉を読み取っていた事をすっかり忘れていた。
「だぁ――っ、しまったぁ!」
思わず大声が出て周りを驚かせたが、罪のない人を執行という恐怖心が勝り、倉稲を使った時の感覚すら消えてしまっていた。
犬の世界での事は今も記憶に刻まれていて、目の前で罪もない者が殺され、抗うチカラを持つ私は代わりに動かなければと思った。
そんな自分が敵以外を攻撃する事は絶対に許されず、プレッシャーに負け無意識に受ける側を選んでいたのかもしれない。
「成長には乗り越えるモノがあり、保身に回ろうとする気持ちは分からんでもない、だが私達の使命を全うするには……」
「――それ誰キャラ?」
熱く語る台詞は若干心に刺さったが、忍者探偵譲りだと思うとつい遮ってしまう。
「私達忍者も修行の身として、本家同様試練を乗り越えていくしかない」
忍者ではないけどねと返したかったが、偶然にもヒントをくれた瑠里に頷き、並んだ五人に向かって構え直した。
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