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「あれ?瑠里もお茶飲んだんだ……まぁいいや、二人共検査室に来て」
「――えっ?!」
ペットボトルの水を渡された辺りで刻印の出るお茶を飲まされた事に気づいたが、事前報告くらいしてくれてもいいのにと水をガブ飲みしていた。
「久々の感覚でしょ、サプライズだよ」
スイーツをたんまりと食べたので文句は言えないが、せっかくシャワーしたのに、真夏にランニングをしたぐらい汗の量だ。
処置室に入ると瑠里とは別の部屋になったが、つなぎを脱ぐよう指示され、木村さんは刻印をチェックしメモを取っていた。
面接で飲んだ時より火照りが酷いし、見える範囲で刻印も増えている。
何となく目を閉じると横になってと指示を受け、言われた通りに従った。
こんなに出ていても仕事を辞めれば消して貰えるし、普段は見えないので生活に支障もない。
でも浮かんだ印を見ると、自分が化け物になっているのではという、漠然とした不安に包まれ目を背けたくなる。
実際に俊敏すぎたり空を飛べたり、水の中で息が出来たりと普通ではなくなっているが、それほど敵も手強いという事だ。
仕事を今まで続けてこられたのはスキルアップやチカラのおかげだし、商売道具と考えて諦めるしかない。
「う……ん、シャワーしてさっきの部屋で待機してくれる?」
「分かりました」
こんな時は余計な事は聞かず、素直従うのが賢明だというのも、ここで勤める上で必要な事だと知っている。
分からない方が幸せだったり、知ったがばかりに巻き込まれるというトラブルを何度も経験したからだ。
シャワーと着替えを済ませ部屋に戻ると、瑠里はアイスコーヒーを飲んでいて勧めてくれた。
「お茶飲むんじゃなかった、汗だくになったよ」
「私への罠だったんだね……ってかなんで刻印調べるのかな」
「倉稲に関係してるんじゃない?」
木村さんの女優レベルは高すぎるし、貧乏人の習性も熟知されてるので、あの人の罠だと逃げようがない。
でも親族みたいな悪意を感じず、私達の事を思っての行動だと受けとれるのは、普段の態度や信頼関係の賜物だといえる。
「まあ、何か原因分かるかもだし」
「そうだね、いつまでもヘコんだ般若を見るのは張り合いないからね」
そこは普通に『姉』でよくないかと思うが、結果にドキドキしてるのが自分でも分かり、ツッコむ余裕もなかった。
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