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勝手に奉行と結び付けていたので『和』を想像していたが、洋風の家が並んでいるので田舎といってもスープとパンが食卓に出そうな雰囲気だ。
オヤツには焼き立てのスコーンに紅茶と妄想は膨れるが、夜で人の姿はなく遠くで明かりが見えていて、どうやら祭りらしい。
村といっても貧困の差があると聞いていた通り、大きな建物は前面にあり、奥には古かったり小さな家が固まっている。
民宿をしているのは勿論広々とした建物で、待ち合わせ場所もペンションのようだった。
入口で数人の男性とオーナーらしき女性が雑談していたが、その表情は困っているように見え、ナンパでもされてるのかと呑気に構えていた。
「ああ、来た!」
須藤さんが友達のようにフランクに手を上げ、もう芝居は始まってるみたいで、瑠里は素早く振り返し合わせている。
さっちゃんともう一人の男性の顔も見えたが、滋さんが居る時点で急に緊張感が増してきた。
『金刺繍が監視ってどういう事?そんな危険な場所な訳?!』
瑠里も同じ事を考えていたのか苦笑いで、滋さんは気にする様子もなく私の隣に立っていた。
「どうしましょう……こちらのミスなんですけど、四人分の部屋しかご用意がなくて」
女性が困っていたのはこの事らしく、他の民宿を勧めようとしたが時期的にどこも満室で、今日はお祭りもあり皆出払ってるらしい。
「私帰りますよ?また次回お邪魔します」
「でもこの時間から街に戻るといってもバスもありませんし、タクシーだと時間も金額もかかりますから」
イザリ屋の扉を潜って来たので大丈夫とは言えないが、出来る事ならこのまま帰るのが一番助かる。
でもオーナーは誰か泊めてくれる人がいないかと電話までしてくれ、親切だけど心で『うまくいきませんように』と祈っていた。
紅茶を出してくれスプレーを振って飲んでいると、泊めてもいいよという人はいるが、裏のエリアですがどうしますと選択を迫られた。
来る時に見た小さい家や古い家の辺りなので、貧しい人が住んでるとこだけど大丈夫かの確認をしたいようだ。
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