100人が本棚に入れています
本棚に追加
男性陣の視線がこちらに注がれているのは分かるが、せっかく泊まるなら少しでもいい場所を希望なのは私達だって同じだ。
ここはレディに民宿を譲り、男性でジャンケンでもするべきだとこちらも睨みを利かせる。
「ここはウニやイクラが美味しいらしいですね、楽しみだなぁ」
「フォアグラ料理もあるって聞きましたよ」
思わず顔をしかめてしまうが、私達は苦手でフォアグラは食べた事はないが、恐らく口に合わないと思われる。
貧乏であるがゆえの見えない壁だったが、オーナーはやはり申し訳なさそうに口を開いた。
「そこは両親を亡くした子供二人で暮らしているので……部屋はありますが、料理は外で食べる事になるかと」
「いえ、大丈夫……です」
どうせ食べれないので残すのは勿体ないし、美味しく食べれる人に譲るべきなのは分かるが、女子にハードな道を選ばせる悪魔達の事は忘れないだろう。
「僕代わりますよ、男はどうでもいいけど女性にとって睡眠は大事なんで、ベッドで眠って貰いたいし」
さっちゃんはやはりジェントルマンだと感心したのも束の間で、死神……いや滋さんがすぐに口を挟んできた。
「彼女達の方が子供も警戒しないんじゃないかな?晩御飯は済ませてるし、今日は寝るだけだから」
「そうですか、ではご案内します」
家まで見送ろうとしたオーナーを止め、すぐそこなら大丈夫と勝手に断る滋さんに『死神め』と反抗的な目を向け裏口を出た。
気配を感じて目をやると、木の陰に子供が二人いるので、恐らくお世話になる家の者だと思って声をかけた。
人見知りなのか頷く程度だったが、服装を見ると親近感が湧いてきて、こちらから近づいて行った。
見た目は人と変わらないが、袖元に毛玉があるニットを着ている男の子で、お兄ちゃんは中学一年生くらいだろうか。
この世界に学校があるかは分からないが、例えるならそれ位の年齢だと思われる。
両親を亡くしたと聞いているので、兄は生活の為に働いているかもしれないが、弟はまだ小学生くらいなので労働は厳しそうだ。
最初のコメントを投稿しよう!