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イヴなので駐車場は空いていたし、順番を待たずに中に入れ、隣席に誰も居ないのも気が楽だ。
席に着いた時点で戦場が始まり、落ち着いて食事という雰囲気が全くないので、近くに人がいると恥ずかしい思いをする。
注文役は瑠里だがいつも頼むメニューは変わらず、今回は券があるので、私の希望の品サラダも採用されていた。
確かに野菜類は祖父母宅で母がちまちまと作ってるし、あえて頼まなくてもいいのは分かるが、肉があまり得意でない私の食べる品が更に減ってしまう。
いつも薄めのお肉を頼み少し食べたら満足するので、もっとゆっくり食べたいのに二人が戦地に誘う《いざな》ので無理やり巻き込まれる。
網が置かれるとまだ肉も届いてないのに手を拭いて箸を割り、気持ち的な準備なのか受け入れ態勢は万全なようだ。
「ファミリーセットお待たせしましたぁ」
まずは大皿で二~三人前のカルビロースセットが運ばれ、瑠里が一気に網に乗せた。
ドラム缶がトングを持ち肉を並べ、息の合ったパフォーマンスで、普段はぶつかってばかりだと到底思えない。
貧乏人にとってご馳走は人格を変える程の貴重な品で、ウチの二人にとってお肉はいつまで経ってもスター格なのは変わらないらしい。
いつの間にかタレが皿に注がれ、小ライスは定位置に置いてあり次に私が食べれる薄めのロースが届くと、戦士は次々と網の肉を取りスペースを開けている。
一口頬張った二人の顔は感動すら覚える程、美味しさが染み渡ってるようで、会話もなく黙々と食べていた。
「いつも言ってるけど、もう少し落ち着いて……」
網から視線を逸らさず瑠里は無言で頷いているが、私の言葉を聞いているとも思えないし、サラダが運ばれても見向きもしない二人に溜め息が漏れる。
一応二人の分も取り分けて目の前においても、戦士達が網から目を移す事はなかった。
「その食べ方直さないと、高級焼肉店とか連れて行って貰えないよ?」
「えっ?!高級?」
実際はテレビでしか見た事がないが、こんなに食いつかれると思ってなったので若干焦る。
「社長に、いつか誘われるかもしれないでしょ」
私だってこんな肉好きの二人なら、もう少し金額が上の店に連れて行ってあげたいと仏心も出るが、この状態だとハッキリ言って恥ずかしい。
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