新人研修・本番

18/20
99人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
セクロが眠そうだったし、客も増えて来たので店を出る事になり、ルーア達とは又会おうと連絡先を交換し、土産を渡してお別れをした。 「結局何しに来たんだろう、普通に仕事だったわ」 「まぁ終わった事だし、明日からはゆっくりしようや」 瑠里達のチームは本当に途中で追手が消え、休憩がてら屋台でパンを摘まみ、ホットドリンクを飲み身体を温めていたらしい。 従業員証をかざし扉を潜ると消毒の通路を通り、シャワーと着替えを済ませ、受付で木村さんの顔を見るとまず愚痴が零れた。 「聞いてくださいよ、執行役がすぐに来なかったんです!私自力で戦う羽目になったんです!」 「お、お疲れ様、大変だったね……勿論給料もつくし……」 「どいつが執行役だったんです?滋さんだったら文句言ってやりたいんですけど」 木村さんに言っても仕方ないのは分かっているが、誰かに聞いてもらいたい……というか、ルーアを近くに待たせ執行もこなした分の八つ当たりだ。 「ホント百合はいつも危険な目に合ってるし腹立つよね、気が晴れるなら私をビンタしていいから」 「いえ……それはいいです、罰当たりますから」 すぐに怒りを沈められてしまい、指示された部屋にはコーヒーと、ご機嫌を伺うようにお菓子まで準備されている。 まるでこういう展開になると予知していたとも取れるが、さっきのカフェでスイーツモードが加速していたので、すぐに手を合わせていた。 明日から休みだしまあいいかと、帰る頃にはすっかり忘れてしまっていたが、木村さんに明後日は午前中だけ出て来てと見送られた。 「研修結果の報告だよね多分……」 「今更どうあがいても変わらないんだから、般若は身体をゆっくり休めて爆眠したらいいよ」 いつもの仕事とは違い慣れない事ばかりだったし、他人もいて気を張ったので、翌日は夕方まで眠ってしまいドラム缶に起こされた。 「ホントいつまでも眠てるね、休みの最後に日帰りツアー決定したから、報告しようと待ってた」 「――あ、ごめん、ちょっと疲れてたのかも」 昼間に連絡したようで母はウキウキしていたが、寝起きでまだ頭がボーッとしているのもあり、実感が湧かなかった。 日帰りバスツアーを励みに研修を乗り越えたので、絶対に楽しんでやるとベッドから下りた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!