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待望の日帰り湯煙バスツアー
「ええ、何もいう事がなかったんですよ、百合さんは少し心配だったんですが本番で発揮する『現場向き』でむしろ優秀でしたし」
「実のところ本当に驚かされたよ、新人の女性と聞いてたが羅刹鬼、もしくは夜叉かと思う位の迫力で……」
「気持ちは分かるが、皆には『般若』で通ってるから、勝手にニックネームを変えてもらっては困……」
「そこじゃねーだろ!」
思わず声を荒げると、社長は咳払いをしてからじいさんを勝ち誇った目で見ていた。
須藤さん達は陰で行動を監視していたらしく、狙撃後からは見失うかと思う程ハイスペックだった為、現場タイプだと判断されたようだ。
敵の見分けも出来ていたし、ルーアをその場から離し執行に入ったのも素晴らしいとべた褒めだった。
「あの場に現れるつもりはなく、ルーアの足止めに仕方なく話しかけたが、普段は無口キャラだし苦労したわい」
「キャラ……なんですね、かなり話しかけづらかったです」
「スージーは役に入り込みすぎだよね、もっと楽な設定で暮らせばいいのに」
社長の言葉で瑠里と顔を見合わせたが、聞き間違いとはどうしても思えない。
「あの、今スージーって」
「ああ、コヤツの名は須藤玄天だから須藤のじいさんで略してスージー!」
外国人から女性へと想像が変わり、最後には思いもよらぬスージー像にイメージはガタ崩れだ。
「確かに野生の狐みたいな勘で、姉妹の才能を見つけ出したと言わざるを得ない、俺の負けだ」
「ふふっ……ほほほ……どぅわ――はっは!ワシの勝ちじゃ、見直したじゃろ?やっぱいい男じゃろ?お手本にしたい男性ナンバー……」
「賭けに負けたから今日のクラブ代はワシ持ちでいいが、いい男とは思ってない、キツネ似で調子に乗るただのじじいだ」
うっかり聞き流すところだったが、瑠里は即座に原稿用紙数枚分で説明をお願いしますと、社長に冷ややかな視線を向けていた。
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