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旅行の前日が休みじゃなければ断ったかもしれないが、メンバーにハツさんや木村さんがいるので、事情も分かってくれている。
何の気兼ねもなく楽しめるので、スナック菓子を手に取って時代劇を見ていると、夜七時に寝ようかと母が言い出し即座に却下した。
厚化粧をする訳でもないので、九時に寝て五時に起きると就寝したのに、四時半くらいから五分間隔で起こしに来てかなりウザい。
私は諦めて起きたが瑠里はイラッとした表情で、まずは顔を洗っていた。
王子達に顔を舐められたに違いないが、この起こされ方はかなり損した気分になるので、仕事の日なら逆ギレしそうだ。
「瑠里は中々起きないから、早めに起こしてあげたんじゃない」
母は当然だという顔つきでラップに包んだおにぎりを並べているが、いつもよりもかなり小さめで、顔は羽二重餅のように白くなっている。
「ぷっ!化粧厚い……ってかファンデーション濃いよ」
気合いが違う方向で入っているので、ティッシュオフを勧め、瑠里が顔を洗うのを待つ為にコーヒーを淹れていた。
「早く散歩に行こうと急いだから、重ねすぎたかな?ナチュラルメークでも素敵な大人女子だもん、塗りすぎは厳禁だよね」
「いや、スッピンでは外に出れないお婆さんだけど、最低限のマナーは守らないと怪物だと思われるから」
顔を洗い終わった瑠里がツッコむと、言い返す母といつもの口論が始まったが、気にせず歯を磨くと粉をはたき直した羽二重餅が目の前に現れた。
「ねぇ、これ位でどう?」
「まぁ……少しアッサリした羽二重餅って感じ?」
失礼ねと鏡を見直して微調整をする母に、瑠里は涙目で笑いながら支度をし、王子達は眠そうに丸くなっていた。
王子達の迎えの時間になると、母は服を着せ替えてから何枚も写真を撮り、親バカぶりを発揮している。
テーマはパッと見で分かるがキセロはちょっと可哀想な気がして、苦笑いが出そうだが瑠里は気に入ってるようだ。
「ひな祭り来月だもんね、キセロもオスだけど姫姿でも可愛いね」
イナリは写真のポーズもドヤ顔で決めているが、キセロも最近は覚えたのか、まんざらでもなさそうにポーズを取っていた。
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