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「ホワイトクリスマス……だね」
「だからさぁ、ニンニク臭を放つ中年オバサンが言っても全然ロマンチックじゃないから」
十分程の道のりでも車内はとても騒がしくてムードも何もないが、貧乏一家にとって、ご馳走にありつけるのは笑顔が漏れるイベントだ。
マンションについて玄関の前に立つと、ドアの向こうから王子達の気配を感じたのか母は私達を押しのけて一番に入って行く。
「お待たせぇ――っ、ママ食事してきたけど王子達にもオヤツあげるからね」
サンタ姿の王子達がオヤツを食べる図も可愛くてずっと見ていられそうだが、まずはシャワーを済ませスッキリしてからコーヒーを飲む事にした。
明日から休みだと思うと急にテンションがあがり、録画してある海外ドラマを見て、夜更かししてからベッドに入った。
「今日は大忙しだよっ!」
結構大きめな声で起こされ、ベッド横の時計を確認するとまだ朝の七時で、昨日寝た時間から換算すると苛立ちを覚える。
「のんびりしようよ、昨日は遅かったんだし」
「今日もクリスマスだよ?目が覚めても枕元にプレゼントもないし、サンタに直談判するしか私には道がないんだから」
裏事情を知ってる大人に言われても可愛げのかけらもないが、言い合いをしていてもキリがないので、仕方なくフリースの上着を羽織ってリビングに向かった。
ドラム缶はメークも済ませ余所行きのニットも着ているので、準備万端で後は部屋着のズボンをデニムに履き替えるといつでも出発出来そうだ。
「何時から起きてんの?」
「――今日は三時かな」
「漁師並みじゃん!」
王子の散歩とご飯を二回食べたとしても、時間が余りすぎだし、私なら少しでもベッドに潜っていたい。
年齢を重ねるにつれ朝が早いといっても、常識の範囲を遥かに超えている気がして、逆に大丈夫なのかと心配になる。
ただ、そういえば夜更かしをしたけど、最後まで起きていたのは私と妹だけで王子達とドラム缶はぐっすりと眠っていたのを思い出した。
「大丈夫だわ、あの様子じゃ」
瑠里も叩き起こされて渋々支度に入ってからは、予定通りにいつものモールに連れ出される。
王子達の新しいオモチャや服、母は散歩時の上着と靴を希望され、店内をかなり歩かされた。
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