新人研修・本番

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新人研修・本番

すっかり忘れそうになっていたが、ここからが私達にとっての始まりなので急に緊張が増してくる。 写真撮影という名目でさっちゃん達と合流し、途中に奉行……いや、この村を仕切るジェーロの住処があるらしく人目につかないルートを歩く。 二手に別れると、こちらの引率者が須藤さんで少しホッとしたが、私達はそのまま川に向かうようで彼を先頭に細道に入った。 「私達は行かないんですね」 「団体で嗅ぎ回っても怪しまれるだけですから、写真でも撮りながら待ちましょう」 川に近づいてくると思った以上に大きく、向こう岸に人がいても小さく見えてしまう程だ。 「あの木の陰で、シャッターチャンスを狙うみたいです」 陣取り合戦が始まっていたが、私達の目的は別にあるので、適当に位置を決めカメラをセットしてもらっていた。 「あの中にジェーロの手下がいます、命令で撮影に来ますから」 何となくで場所を選んだようで、実は理由があったらしく、ここから撮影者達は一望できるし怪しまれないのはさすがだ。 使いっぱしりを監視したところで情報収集にはなりそうもないが、目に留まったのは連れの幼い子供だった。 「あの子は息子さんですか」 「いいえ、貧しい家の子でしょうね」 チカラを奪われて奴隷のように働かされているのは大人だと思っていたのに、セクロ達と変わらない年齢だと知り顔が強張った。 「勿論大人もいますよ、ただし女性ですが」 女性と子供が特殊なチカラを持っている……と言う事は、失踪者もそれに該当し苛立ちを覚える。 「あまり感情を出さないようにして下さいね、見破られますよ」 「あ……はい」 利用されてるとはいえ、子供は向こうの手中にあるので、バレないように紛れておかないと敵にチクられてしまう。 「悪徳奉行の化けの皮を剥がしてやろうぞ」 背後のなりきり忍者探偵にため息が漏れそうだが、言ってる事には賛同出来るので頷いておいた。 息を潜め鳥を待つ者の気持ちはよく分からないが、水面に舞い降りると急にシャッター音が響き、見た事もない色に暫しポカンと見惚れていた。
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