第二話  大賢者と旧友

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「バターパン3個にポトフを平らげてましたよ。それよりもほら、お客さん!」 「おぉ? これはこれは、どうも。……どちら様だったかのう?」 想定以上にダメだ! 研究に行き詰まったから、こやつの補助魔法について聞かせてもらおうと思ったが、それ以前の問題である。 それからというもの、ワシは4度の自己紹介をし、空腹だという嘆きを5度聞いて、家政婦さんのため息を7度聞いてから家を後にした。 かつては大陸中の婦女子を魅了した男も、こうなっては形無しである。 「老いは、全てを覆い尽くすのか」 帰り道にそんな呟きが溢れた。 まだ明るい時間であったが、不思議と周りの景色が暗い。 その日差しでさえ間もなく落ち、やがて夜になるだろう。 ーー夜が来る。 そんなものは何千回と体験した日常であるが、今ばかりはそれが恐ろしかった。 暗闇が死を暗示するからであろうか。 では日暮れとは、我々老人を象徴するものであるというのか。 「老いとは何か。まるで魂が少しずつ腐食していくようだ」 答えの無い問答が続けられた。 それはいつの間にか、過去を振り返る心の旅となり、思考は深いところへ落ちていった。 『クラスタさん、ここは私に任せてください。門扉など強引に破壊してしまいましょう!』     
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