第一話  大賢者と娯楽品

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第一話  大賢者と娯楽品

かつて、大陸は無明の闇に落ちていた。 魔王とその手下によって、あらゆるものが破壊し尽くされたが故にである。 平穏、尊厳、文明、歴史。 ありとあらゆるものが、突如現れた魔王によって奪い去られた。 抗う力を持たない小国は全て陥落し、残された大国は王都の守りを臆病なまでに堅牢にすることで、人類の命脈を保つという有り様。 援護の一切無い、籠城戦を強いられる日々だけが過ぎていく。 人々は渇望した。 ーー誰でもいい、助けてくれ! 人々は待ち望んだ。 ーー神よ、我らを救いたまえ! 希望の見いだせない日々に絶望の色は徐々に濃くなる。 だが、光明はあった。 魔王の出現が突然なら、英雄の輩出も突然だった。 どこからか現れた3人若者が、瞬く間に魔族を打ち破り、さらには魔王を封じ込める事に成功する。 人々はみな狂喜した。 王はあらんばかりの称賛と、財貨と、爵位をもってしてその功績に報いた。 それからはと言うと、陥落を免れた国は統合され、新王朝が生まれた。 それが今から50年以上前の出来事。 王国歴57年。 物語はここから始まる。 ーーーーーーーー ーーーー 大賢者クラスト。 それがワシに贈られた『名』であった。     
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