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箱を出ながら引き続き落合さんについて考察する。
もうちょっと早くあの天性のひょうきんでお茶目な素顔に気が付いていれば、もしかしたら彼の方に惹かれていたかもしれない。
あの時の告白も素直に受け入れられていたかもしれない。
でも、こういうのはタイミング、巡り合わせだからね…。
という所まで考えた私はふと思考が逆戻りした。
……もうちょっと早く?
自然に浮かんだそのモノローグに思わず突っ込みを入れる。
一体何の事象に対しての『早く』なの?
しかも『彼の方に惹かれて』ってのはなんなんだ?
それじゃあまるで、他にそういった人が存在するみたいじゃないか。
ダメだなぁ。
いくらド素人で全く人気が無くても、一応小説を書いている立場なんだから、常日頃から正しい日本語の表現、言い回しを心がけないとね。
そんな風に自分自身にダメ出しをしながら私は足早にロッカールームを目指した。
マッハで荷物の整理をし、庶務課へと移動して自分の席に着いた時には始業時間の4分前だった。
まぁ、これくらいなら許容範囲内だよな、と思いつつ貴志さんの方をチラリと盗み見ると、宣言通り、すでに業務に突入しているようで、PC画面に向き合い熱心にキーボードを叩いていた。
すぐに彼から視線を逸らし、私も自分の端末を立ち上げるべく電源ボタンを押す。
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