第19章 好きだから許せない

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今まで神野くんを平気で受け入れていられたのは、彼の気持ちは自分にはなくてただ身体の欲求だけを向けられてるって割り切れてたからなのかも。上林くんと高松くんについてはそこは神経を遣わなきゃいけないなって常に自戒してたけど、後からやってきた神野くんのことはもう少し気楽に考えてた。 だってこの人がわたしに対して、特別な思い入れを抱く理由なんか一個もない。偶然の巡り合わせでたまたまこんなことに巻き込まれた通りすがりの気の毒な人。だからそこは思いやって親切に接してあげなきゃって意識はあったけど。 わたしはいたたまれない気持ちになり目線を外して顔を俯けた。何か個人的な思いをわたしに持つなんて。全然そんな風に思われるようなことだってした覚えないし。 急に神野くんとしたあれこれがわあっと脳裏に沸き立つように浮かび、頬が爆発したように火照る。あんなことを、しながら。…わたしに特別な気持ちを感じてたっていうの? 「全然。…そんな風には。思えなかった、から」 冷静な態度を保てず途切れとぎれに言葉を絞り出す。抑えきれない疑問がそのまま口をついた。 「でも、何で?よくわからない。わたし…、あなたに、何か好意みたいなものを持ってもらえるようなことは全然。…してないし。むしろ、男の人だったら普通に嫌じゃない?こんな女」 結局正直な思いをぶちまけてしまう。     
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