最高の言葉

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『元気?』と、メールを打ったのが1ヶ月前。 『会いたいよ』と、打ったのが、2週間前。 『連絡をください。くれないと家行きます』と、打ったのが昨日。  まるで、これは脅しだな。と、自分でも思った。恋の火種がすっかりとくすぶっている。それでもあたしは最後の、終わりの言葉をもらえなくて、立ち止まっていた。  奥さんのいる人を好きになってしまった。ちまたではそれを【不倫】と呼ぶ。事実ひっそりとしか会えないし、公にもできない。友達にも言えない。ましてや親にも。  あたしと彼は職場で出会った。建築士の彼の事務員として新卒で入ったあたし。お互い惹かれ合うのは自然だった。運命だったとお互いに思ったと付き合って間もない頃に口並を揃えて口にし、ケラケラと笑った。  あの頃は何もかもが輝いて見えた。根暗なあたしを明るい場所に連れてきてくれた彼。彼は現場監督もしていたので一緒に現調に行ったり、図面を描いたりと仕事もプライベートもほとんど一緒にいた。 「嫁さんに、あやちゃんのことがバレたんだよ」  付き合って2年くらいした頃、彼が眉根を潜めながら弱々しい声音で口にした。 「、う、嘘っ?」  ちょうど一級建築士のテストの前日だった。顔色も悪くとても辛そうに話しをする彼の横顔が今でも脳裏にこびりついている。 「ほんとう。嘘言っても仕方ないだろ」 「明日、テストだよね?」  彼はうなずき、指で眉間をもんだ。 「どうしよう」  この後に及んで出てきた言葉はどうしようで、あたしは途方にくれた。 「しばらくは時間をおきたいんだ」 「え!しばらくってどれだけ。いやだよ。別れとか。だってあたしは、脩ちゃんしかいないんだよ。ねぇ、」  あたしは必死になって脩ちゃんの肩を掴んで揺らした。脩ちゃんは、とても疲弊をしていて、それ以上の言葉を吐けなかった。  その頃からだろうか。  職場で顔も合わすもよそよそしくなり、あげく、その1年後、脩ちゃんは、独立をし会社を辞めた。自営で工務店をやりだしたのだ。一級建築士は未だに受かってはいない。そのかわり、あたしも意地で、施工管理士と、宅建などの資格を習得した。なぜか意地になっていた。  とゆうか、脩ちゃんにもっと近づきたかったのだと思う。
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