0人が本棚に入れています
本棚に追加
奥さんにバレた理由はスマホだった。スマホでのメールのやり取りを見たらしい。酔って寝てしまった時、指紋認証でスマホを解除した。まるで、ドラマじゃん的なことが現実であって聞いた時、呆れてものが言えなかった。
脩ちゃんはとても多忙になった。それでもなんとか、騙し騙し、あってはきたが、連絡は減って、メールの返事も来たりこなかったりが続いた。
ダメなのかな。そう、思って、ダメだし、もういいや、そう思って、嫌われているならそれでもいい、そう思って、脅迫めいたメールを送ったのだ。
仕事が終わって部屋にいたあたしは、だんだんと薄暗くなってゆく中でメールを待った。
『ちゃん、ちゃん、』
え?
あたしは電話が鳴ったのでびっくりして飛び起きた。
ディスプレイに映し出された名前は、脩ちゃんだった。
「は、はい」
恐る恐る電話に出る。
「おい。脅迫メールはダメだし」
「だって、そうしな、」
まで、言ったら、アパートのドアが急にあいて脩ちゃんが入ってきた。実に会うのは2が月、いや、3が月ぶりだった。
「ええ?」
本当にびっくりすると声が出なくなる。
「きた」
「きたね」
「お前さ、無用心だよ。鍵あいてたから」
脩ちゃんはあたしの前に座った。その横顔がとても懐かしくまた、愛おしかった。
「ねぇ、脩ちゃん。あたしたちってさ、もうダメなのかな」
寒い日だった。脩ちゃんからはおもての夜の冷気の匂いがした。少し温まってきた頃、脩ちゃんは顔をもたげた。
「ごめんな」
ごめんな。やっぱり脩ちゃんは今夜清算をしにきたのだ。そう思ったら、胸が熱くなったけれど、覚悟はできていたから涙は出なかった。
「そっか」
少しだけお互いの近況を喋ってから、本題に入った。
「もうね。合わないよ。苦しめたね」
「ええ。そうとう苦しんだわ。すっかり30歳になったわ」
嫌味も可愛く聞こえたのか、脩ちゃんは、クスクスと屈託なく笑った。
「笑わないで。笑顔なんで見せないでよ。あたしは今でも脩ちゃんが好きなのよ」
なんだの、あーだのと脩ちゃんに爆弾のように言い放った。
「だから、それがもう俺の中で重いんだよ。わかるだろ。俺のことが」
喉がとても乾いていて唾すら飲み込めない。
「じゃあ、もうあたしのことが嫌いになったってこと」
脩ちゃんは首を横に振って、
最初のコメントを投稿しよう!