第一章 追憶と再会

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 別段、独身を貫こうとしている訳ではない。ただ、ご縁もあるし、無理に相手を見つ ける必要性を感じなかったのだ。もし、ご縁がなければそれはそれで構わない。それに、 聖には理想の男性像があった。誰にも言わず、秘かに夢見てきた……。  それは「赤毛のアン」に出てきた、主人公アンの永遠の恋人『ギルバート』である。 中学生の時に読んだ時、すぐにお気に入りの本となった。何となくだが、想像力豊かな アンと自分が重なる部分、何よりギルバートのアンへの一途な想いに憧れた。モテモテ の男子が、言い寄る女に目もくれず自分だけに夢中になる。こんなシチュエーション が理想だった。お小遣いを貯めてシリーズ全巻を手に入れ、夢中になって読んだ。  そして夢見ていた。一途に愛を捧げられたら、自らもそれに応えるのだ。君影草 《きみかげそう》のように……。  部活動は高校、大学ともラクロス部。勝つ事よりも楽しむ事を優先させた感じで 楽しめた。普通の私立の文系の大学に進み、とあるメーカーの総合事務職へ就職。 大学でも職場でも合コンとやらに誘われたが、愛想よく丁寧にお断りしてきた。  24歳ころになると、結婚する友達、また妻子ある男性と不倫をする友達もちらほら 出て来るようになった。結婚した友達も、夫の不倫を疑ったり、また自身の浮気願望 を相談されたりする事もあった。親身に相談に乗りつつも、 「男も女も秋の空なのね。自由恋愛を楽しみたいなら、生涯独身でいれば良いのに。 子供にバレたら子供が傷つくと思うわ」  と内心では酷く冷めていた。同時に、やはりギルバートのような男性はもはや このご時世にはもう存在しないのだ、それにあれは物語ではないか、と諦めかけていた。
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