第3章

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どうしてこんなことになったかって? 時は1時間前に遡る。 「アロー?ムッシュ九条はご在宅かな?」 彼が天宮の屋敷を訪れた時 偶然庭先にいたのが僕で。 「いいえ。多分屋敷にいるのは僕だけ……」 年の瀬とは思えない春みたいな陽気。 僕は気まぐれに庭いじりをして 季節外れのリラの花を摘んでいた。 「裾が」 「え?あらら」 長いニットカーディガンの裾は泥だらけで 突然現れた美しい客人を驚かせたけれど。 「それにしても……綺麗だね」 「よく言われます」 それ以上に 「ふふ、リラの花のことを言ったのに」 彼は一瞬で僕を気に入ったようだった。
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