第3章

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アンゴラのニットを剥ぐと 肩が剥き出しのタンクトップ一枚。 「メルシー」 鼻に抜ける気取った声で僕は笑った。 「下はまだ寝間着だったんだ」 ムッシュ・デュボアは目を丸くして リラの花を抱えた僕についてきた。 堅物の執事長がいたら ひっくり返りそうだなと思いつつ。 「こちらへ」 肌も露わな寝間着姿のまま テラスルームの入り口からゲストを招いて屋敷へ通した。 「お紅茶か何かいかが?僕が淹れるので味の保証はできないけれど」 「そんなことより君、早く着替えた方がいい」 汚れたアンゴラのカーディガンを抱えたまま ムッシュ・デュボアは早口に言った。 「そんな恰好で風邪を引くといけないし、手も洗わないと。あーあ、裸足じゃないか。ほら、スリッパを履きたまえ。足が氷のように冷たいじゃないか」
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