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「ねえ、やっぱり変だよ」
先に口を開いた彼女が言う。
玄関に見覚えのない縫いぐるみ。
店で見れば愛嬌ある顔もこんな状況では不気味だ。
俺は縫いぐるみを拾ってそのままゴミ箱にダンクした。
「引っ越ししない?」
ゴミ箱から無様にのぞく縫いぐるみを嫌そうに見ながら提案する彼女。
「会社から少し遠くなるけど、あたしの部屋においでよ」
「いいの?」
それは魅力的な提案だった。
今までのような半同棲ではなく、完全な同棲。
「いいよ」
にっこり微笑む彼女をぎゅっと抱き締めた。
毎日を彼女と共に過ごせるなんて、なんて素晴らしい!
ここしばらく俺たちを悩ませた不快なプレゼントにすら感謝したいくらいだ。
嘘だけど。感謝なんてしないけど。
ごみ箱の縫いぐるみに見せつけるように、俺は彼女にキスをして、甘くねだる。
「今すぐ君がほしい」
「ばぁか」
クスクス笑いながら彼女が言った。
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