キラー・ウィルス

2/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
【登場人物】 橘 響子(29) 広告代理店・CMプランナー 北原 涼(34) 日報新聞社・記者 大場 剛(47 )BW社研究員 【プロット】 スマホのアラームで目覚めると、そこは屋外階段の踊り場だった。 橘響子は、毎月同じ日の未明、ここへ来る。ここから見える朝の富士山が最高なのだと教えてくれた彼はもういない。 2年前、響子の目の前で不良達に殺害された。それ以来、彼らを殺してやりたいという思いだけが響子の生きる支えだった。  そんなある日――彼女は電車の中で殺人事件に出くわしてしまう。突然サラリーマンが狂ったようにナイフを振り回したのである。 まるで2年前のあの時と同じ――響子は恐怖で気を失った。 そして、平凡だった彼女の生活がそこから少しずつ狂い始め、一週間後には社会全体が狂った。都内のあちこちで凶悪犯罪が伝染病のように蔓延し、殺人が横行した。  それら事件を調べていたのが新聞記者の北原涼だった。そして彼は、ケーブルテレビ番組に仕組まれたサブリミナル映像を見た人間が殺人を引き起こしている事を突き止める。ところが、犯人達の中の半分はその放送を見ていない人達と判る。  響子が北原に出会ったのはそんな時だった。同時に響子にも一連の事件の犯人達と同じ、無意識の内に人を殺したくなる症状が表れた。    何が原因なのか――― 判っているのは犯人達と同じ地域に住み、同じ水を飲んでいると言う事だけ。 しかしそれが事件解決への糸口となる。  人々を狂わせたのは、BW社と言う浄水会社の配給している水の中に潜むウィルスが原因だった。それを作ったのは、BW社の研究員大場誠。彼は7年前、BW社の親会社が全国展開しているリゾートスパの感染症で一人息子を失うという悲しい過去を持つ。しかし経営側は死者が一人だった事を幸いに息子の死因を持病の喘息として揉み消したのだ。彼はその時から復讐鬼と化した。そして悪魔のウィルスを生み出したのだ。 何と、怒りを持つ人々の脳内のノルアドレナリンにストレスを与えて増大させ、殺意を持たせると言う悪魔のウィルス。それを生活水に混入し、響子のような怒りを持つ人々の理性を蝕んだのである。   事件解決後、響子は屋外階段の踊り場から富士山を見ながら手を合わせた。隣りで共に手を合わせていた北原が響子に囁いた――人を憎んだら、それ以上に誰かを愛せばいい。その方が幸せになれるからと。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!