普通、特殊、普通

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 普通、特殊、普通

 窓を、拭いている。さっきまでは床を拭いていた。  俺は、派遣アルバイトで言われた通りに、このビルに訪れ、実際には清潔だが薄汚れたように見えるグレーの作業着を着用し、窓を拭いている。それだけだ。  窓は、乾いた雑巾で拭いたそばから結露で曇り始める。白くなったところにスプレーを吹き付けて拭うと、少しの間だけ外が見える。外よりも手前に、半透明になった俺の顔が映る。  俺の顔は、普通の顔だ。テレビに出ているイケメン俳優や、ブサイクを売りにしたお笑い芸人と、全く対極の顔。何かに似ているとか、そういうのは言われたことがない。いや、それは嘘だ。一度だけ「ネットオークションのサイトで、相手の評価を普通にするときの顔の記号に似てる」と言われたことがある。笑っていないニコちゃんマークのことだ。とにかくそういう顔だ。     
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