短篇小説

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俺を心地よい眠りから連れ出したのは玄関の扉が開く音。後から続くように大好きな君の声が部屋へと響き渡る。 「ただいま。」 待ちわびていた君の帰りにピンと伸びそうな尻尾を必死で抑え、本棚の上で素っ気なく欠伸をひとつ。 君は俺を見つけると嬉しそうに「おいで」と両手を大きく広げた。すぐにでも君のもとへ飛んで行きたい気分だ。 でもいいオスってのは好きなメスの前でデレデレしないものなのさ。 君は本棚の上から動こうとしない俺の様子を見ると、今度はソファーに座り膝を叩いて俺を手招きする。心地よいリズムが俺を誘惑する。 君の膝の上は最高だ。 だが好きなメスより高い目線にいたい。 これは俺のくだらないプライドなのさ。 ああ、そんなに悲しい顔をしないでおくれ。 今回だけは特別だよ。 君は嬉しそうな顔で「素直じゃないな」と言うけれど、君はまるで分かってないオス心ってやつを。 何度目か分からない特別に俺のプライドはズタボロなんだ。早くその綺麗な指で俺を撫でておくれ。
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