短篇小説

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ある日いつものように君の帰りを待ちわびていた。 玄関の扉が開くと共に君の声が部屋に響き渡る。 「ただいま」 大好きな君が帰ってきた。ピンと伸びそうな尻尾を必死で抑えようとすると見知らぬ声が聞こえてきた。 「お邪魔します」 見知らぬ声はどうやらオスのようで少し申し訳なさそうに俺達のテリトリーに入ってきた。 なんだこのオスは……。 あれから君はとびきりの笑顔を向けて、このオスと楽しそうに何か喋っている。 飽きることなく何時間も会話が続いていた。 まるで、この場に俺がいないかのように。 どうして今日は俺を呼んでくれないんだい。 早く君の膝の上で俺を安心させておくれ、君の綺麗な指で自慢の毛並を撫でておくれ。 ……どうしてなんだい。 君のその笑顔が答えなんだね。 君はこのオスを愛しているんだね。 そうか、俺ではダメだったのか。 俺よりいいオスではないけれど、メスを見る目はあるみたいだ。 いいオスってのは黙って好きなメスの幸せを見守ってやるものなのさ。
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