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「俺たち結婚するんだ」
年末の居酒屋はいつもにもまして騒がしい。
喧騒に負けないようやや大きな声で、親友の矢田とその彼女のサクに宣言すると二人も大きな声で祝福してくれた。
一杯目のビールは飲み干して、男は二杯目のビール、女はカクテルを半分ほど飲んで腹もほどほどに落ち着いてきた頃。
矢田が余計なこと言い出した。
「やー、ユウちゃん結婚したらしっかり財布の紐握っておきなよ! こいつカード破産してっから!」
サクが慌てて矢田の口を塞ぐがもう遅い。
俺のとなりで彼女のユウがピシリッと凍りついていた。
「ユ、ユウ?」
恐る恐る声をかけると、ギギギと音がしそうなぎこちない動きでユウがこちらを見る。
肩辺りで毛先がくるんと巻いてあるふわふわの髪によく似合う微笑みを絶やさないユウの目が座っている。
こえぇ!
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