1人が本棚に入れています
本棚に追加
昔々、といってもほんの10年ほど前。
一人のいたいけな中学生がおりました。
うん、ぶっちゃけ俺だけど。
当時中2の俺は、同じ塾に通っていた矢田とほかの仲間と共にお年玉を握りしめていた。
その年もらったお年玉全額だ。
「いらっしやいませー」
正月気分が抜けきらない店員からののんびりした声を受けながらコンビニに入る。
矢田やほかの仲間たちがいつもより少しだけ贅沢なお菓子を吟味している中、俺はとあるお菓子を手にしていた。
いち早く気づいた矢田が「オオ!」と声を上げたから、ほかのやつらも俺に注目する。
「まじで!?」
「お前漢だな」
「タクかっけー!」
仲間たちの尊敬の眼差しを受けながら、俺はそれをレジに置く。
いつもはカサリと鳴るビニール音。
でもその日は違う。
コトリ、と箱のおと。
そう、俺はお年玉をはたいてまるごとお菓子を買ったんだ。
いわゆる、箱 買 い 。
またの名を、大 人 買 い 。
俺は中2にして大人の階段を登ってしまったわけだ。
最初のコメントを投稿しよう!