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竹一様と一緒に館の縁側に移動すると、直ぐに半紙を広げられ、さいの目を出されました。半紙には、竹一様が昨日作られた双六が書かれてあります。
今、竹一様が嵌られている遊びです。
私たちが、声を立てて双六をしていると、決まって旦那様は様子を見に来られます。旦那様は、甥っ子である竹一様が可愛いくて仕方ないという感じです。
「おい竹一、また遊びに来たのか? お小枝は忙しいんだ。独り占めするでない」
「あ、叔父上。また邪魔しに来たのですか? 私はお小枝とだけ遊びたいのに」
「お前は、叔父である私よりも、お小枝の方を気に入りよって」
「だって、叔父上よりお小枝がいい」
そんな態度の竹一様に、「生意気だと」旦那様はお叱りになりました。しかし、お二人はこれはこれで仲が良いのです。
「ああ、そうだった。今日は竹一と遊ぶ暇はなかったんだ。そうだ、お小枝。今から母上様が来られる。ちょっと菓子でも用意してくれないか。母上は甘いものが好物だからな」
旦那様は思い出したようにおっしゃいました。その時、竹一様の顔が曇ってしまわれたことを私は見逃しませんでした。しかし、それはずっとではありません。直ぐに明朗活発なお顔に戻られます。賢い子なのです。
「お祖母様がくるんだね。お忍びで来たからお叱りを受けてしまう。残念だけど、急いで帰るよ」
私は竹一様と旦那様の母上様である芳子様の仲が麗しくないことを知っております。
実は吉隆様と旦那様は異母兄弟であらせられ、芳子様は亡くなられた吉隆様の母上さまの後妻として山内家に入られました。竹一様を良く思われない理由はその辺りにあるのだろうと、誰もが口には出しませんが気付いておりました。
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