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(渉語り)
3月もあと少しで終わろうとしている。
ニュースでは桜の開花宣言が聞かれるようになり、暖かい日が増えて、春物を着る機会が多くなった。
花粉症の患者さんも治療へ来るようになる。僕も例に漏れず、花粉には全く歯が立たない。それでも何とか鍼と薬で乗り切る。
遠くの治療院への応援勤務も終わり、いつもの日常が戻ろうとしていた。
洋ちゃんが僕の居ない間に購入した、新しいベッドが届いた。今まではシングルだったから、シーツから全てを取り替えなければならない。洋ちゃんらしく、すべて水色のリネンで揃えていた。
こういう趣味はすごく合う。僕もリネンの感触と色合いが大好きだ。ベッドが来てすぐに、シーツをセットして2人で寝転んだ。並んで新しい木の匂いを堪能する。
「ふわふわだね。それに広いから、寝返りも半分なら打てるよ。」
寝転びながら隣のアーモンド型の目が僕を見る。とても嬉しそうに跳ねていた。
「ね、渉君。じゃあさ、早速しようよ。新しいベッドでね、ね?」
洋ちゃんが甘えた声を出し、僕に手を伸ばした。その甘さは僕を痺れさせ、一気にその気にさせる。洋ちゃんが僕を求めてくれた時は絶対に断ったりしない。
「もう?まだ午前中だよ。折角の新しいシーツが汚れるじゃないか。」
「じゃあバスタオル敷くから。」
「もう、しょうがないな………」
言いながら洋ちゃんがのしかかってきて長いキスをする。時刻は午前10時30分を過ぎようとしていた。
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