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渉君は諒と共通の友達で、鍼灸師をしている。腕は確かで彼目当てのお客さんが多く、予約も何か月先までいっぱいらしい。
「渉君、仕事は?」
「今日は午後から。最近全然来てくれないから、こっちから来たの。思った通り荒れてるね。」
僕は肩こりが酷い。
昔バスケットをやっている時に肩を痛めた。それから体のバランスが悪くなったらしく、先輩に紹介されて渉君の治療院へ通っていた。
渉君の治療院で、諒とも出会ったのだ。
もう4年以上前のことだ。
それから僕は渉君に定期的に体を診てもらっていた。
すぐ肩こりで頭痛になり吐き気を催すため、諒からは口酸っぱく治療院へ通うように言われていたのだ。別れてからは、コンビニ同様思い出が付いて回るので行かないようにしていた。意識的に避けていた。
あぁ……また諒だ。
何をしても、諒が現れてくる。どこまでも僕を追ってくる。恋しくて苦しくて無意識のうちに探してしまう。
「洋ちゃん酷い顔だよ。仰向けで横になって。すぐ治療を開始しよう。」
僕は言われたとおり、ゆっくりとベッドへ横になった。
「脈も弱いし……、体が冷たい。血流が悪くなってる。眠れてないね。もう、寝不足もいいところだよ。身体が可哀想……」
渉君は僕の手を少し触っただけで言い当てた。
久しぶりの渉君の手は温かくて、少しカサカサしていた。
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