悪い予感

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(渉語り) 確か、2月の終わりだったか……洋ちゃんが実家に帰り会えなかった辺りからだったと思う。 向こうから身体の関係を求めるようになったのだ。それまでは僕が誘っていた。あまり身体を繋げることもなく、互いの欲を出し合うのが主流だった。 それが打って変わって、毎度セックスをするようになる。僕はずっとネコだったけど、洋ちゃんに対しては違っていた。洋ちゃんみたいに可愛い男の子なら、抱きたいに決まっている。自然と役割は決まっていた。そして最中もしきりに甘えてくるようになる。 僕としては単純に嬉しかったが、そんな洋ちゃんの変化が気になっていた。 もしかして実家で何かあったのかと、ものすごく心配もした。洋ちゃんは実家や家族のことを全く話さない。お母さんが音楽家だということは随分前に話していたのを覚えているが、それ以外の情報は全く知らなかった。 何かを忘れようとして、僕を求めているようにしか思えなかったが、深く考えるのは止めた。 少なくとも抱き合っている間は僕のことで満たされて欲しかった。いつか洋ちゃんから打ち明けてくれるのを静かに待っていたのだ。 だって僕たちは恋人だから、そんなことは当たり前だと思っていた。
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