悪い予感

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(なごみ語り) 最近よく行くパスタ屋さんで軽く夕飯を摂って、ヒデさんの店へ向かう。 ヒデさんは僕達の来店に凄く喜んでくれた。 すりすりと間近まで頬を寄せてくるヒデさんを渉君がやんわりと引き剥がす。 「うわぁ、洋一君久しぶり。凄く会いたかった。まだ渉とラブラブ?喧嘩したらすぐ俺のところにおいで。慰めてあげるからね。もう、可愛らしい。ほっぺがツヤツヤ。」 「だーめ。洋ちゃんは僕のなの。今日は商売道具持って来たから鍼してあげるよ。さ、椅子持って来て。」 「えー、まだ触りたかったのに。しょうがないけど、渉の鍼に勝るものはないから洋一君、後でね。」 椅子を持って来たヒデさんに、渉君が鍼を打ち始めた。肩のツボを押さえながら、色々と注意している。 『腕枕をやりすぎ』とか、『裸で寝てるでしょ』とか、終いには『セックスやりすぎ』とか言われていた。 可愛い年下の彼氏のために頑張ってるんだなと思いながら、笑って聞いていた。 僕には僕の世界がある。渉くんがいて、ヒデさんがいて、落ち着ける空間がある。まだ大丈夫だ。大野君がいなくても平気だ。 そうしているうちに、他のお客さんが来店してきた。 小さいお店だから、誰か来たらすぐわかる。ビールをオーダーをする声に僕は驚いて振り向いた。 「あれ、なごみさん。」 「……大野君……?」 彼の隣には秘書室の冷徹男、東さんが一緒にいた。
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