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(なごみ語り)
※そしてヒデさんのお店へ時間が戻ります。
渉君の容赦ないヒデさんへの注意にしばらく笑っていたかった。可愛くて仕方がないというヒデさんの年下彼氏についてもっと話を聞いている筈だったのに。
「………………大野君。」
まさかの大野君登場に笑顔が固まる。
「……なごみさん、なんでここに居るんですか。げっ、待鳥先生も……」
「あ、大野君、その節はありがとう。体の調子はどうかな。また来てね。いつでも待ってるから。お兄さんにもよろしく。」
ヒデさんの肩に鍼を打ちながら、渉君は軽く棘のある挨拶をして、ひらひらと手を振った。どことなく余裕だ。仕事では意識しないよう常に気を張っていても、プライベートの場所に彼が現れてしまい、想像以上に戸惑っている自分がいた。
鼓動が早く波打ち、大野君は元より様子を意味ありげに伺う渉君ですら見れない。
「僕、ちょっとトイレに行ってくる。」
駆け込むようにトイレに入り、ドアを閉めた。
ここのトイレは何故かメルヘンチックで、店内の雰囲気とは真逆のギャップに救われながら、深呼吸をする。
あちこちに小人が隠れているので、見ていて飽きない。個室に座って落ち着くまで待った。
よし、大丈夫みたい。ざわつく心に酸素を送る。
これで、大野君と東さんが一緒にいる理由を聞いても動揺しない。一体どこで何をしたら休日を共にする程仲良くなるのだろうか。少し前に東さんを気にしていたのもその所為だったのかもしれない。
たとえ、付き合っていても祝福できるし、渉君も大切にできる。大丈夫だ。僕は大丈夫。パチンと頬を叩いた。
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