交差する想い

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(なごみ語り) 席へ戻ると話に花が咲いていたので少し安心した。渉君と東さんが簡単な自己紹介をしている。 チラリと僕を見る大野君の視線が気になったが、僕は意識的に目を逸らした。 ヒデさんと東さんは古い友達らしく、久しぶりと軽く挨拶を交わしている。世間は狭いものだ。 「待鳥さんは、鍼灸の先生なんですか。しかも大野君兄弟がお世話になっている。で、なごみ君は時々秘書室に来てくれるよね。まさかこんな所で会えるとは思わなかった。」 冷徹男は、本当はよく話す人だった。スーツではなく私服で見ると、いつもの冷たい雰囲気が崩れ優しさが漂っている風に見える。ネイビーのカジュアルジャケットから覗くストライプのシャツがお洒落だった。 「じゃあ、みんな知り合いなの?なんか征士郎だけ浮いてないか。1人だけおっさんが混じってるけど。」 「まぁ、それは否定しないが。」 東さん達の飲み物を用意しながら、鍼を一旦終えたヒデさんが慣れた口調で話し出す。東さんの下の名前は『征士郎』らしい。 いきなりのおっさん発言にどう反応しようか考えてると、大野君は普通に笑っていた。 大野君………失礼じゃないのかな。 そんなことを気にしなくてもいいくらい2人の仲は親密なんだと思った。心がつくんと軋んだ。
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